熱中症の予防法

メディカル・チェック と コンディショニング・チェック
(1) メディカル・チェック
スポーツ、運動を行う者は、必ず行っておくべきことです。
また、遠征や合宿に行く前には、メディカル・チェックをしておくことをすすめます。

内容的には、以下の項目です。
? 一般的な健康診断
(問診、理学所見、血液検査、尿検査、胸部X線、安静時心電図検査)
? 運動時における運動負荷試験
(心電図をとりならがら運動するものです。)
? 必要に応じて、心エコー検査、長時間心電図など
※ 特に?の運動負荷試験は重要です。

これらの検査によって、潜在的な疾患の有無を確認しておくことが大切です。

(2) コンディショニング・チェック
常日頃よりの健康管理は、熱中症の発生をくい止めるだけでなく、怪我などによる故障の発生などを少なくし、ひいては、運動をしている者のパフォーマンス・アップにつながります。
熱中症ついては、既往歴の確認が必要となってきます。過去になったことのある者は、かかりやすいということが言われています。また、暑熱環境での運動の際には、その者について、特に注意をしておく必要があります。

熱中症は、コンディショニングが崩れたときに発症しやすいものです。チェック項目としては以下の通りです。

? 練習前後の体重の確認
どの程度の水分が発汗によって失われたのかを知ること。
練習の前と後に体重を測り、表にしておく。翌日の練習前の体重測定時に、少なくとも減った分の80%は回復しているようにする。回復していなければ、水分補給が足らない、食事が確りとれていない、睡眠不足などの理由を考え、確りとるようにする。
(例 練習前60.0kg、練習後57.0kg、翌日の練習前に59.4kg以上)
また、運動前後の体重を比べると、特に水分補給が適切であったかどうかがわかります。運動前後の体重減少が2%以内に収まるように水分補給を行うと良いと思います。(体重の3%以上の水分が失われると体温調節機能に影響がでるといわれています)

? 睡眠状況の把握
睡眠不足は熱中症を引き起こしやすく、また、疲労の蓄積、集中力の低下などによってケガなどを誘発させますので、睡眠時間や睡眠状況をチェックしておく必要があります。
睡眠時間は8時間以上、就寝と起床の時刻を一定にする、寝苦しくて寝れない、などのことが無いように気をつけてください。

? 怪我、故障の把握
軽い怪我や故障を持ったまま運動をすると、健康な状態に比べて、多くのストレスが体にかかります。通常より精神的にも体力的にも疲れる原因ですので、運動量のコントロール(通常より少なくする、故障しているところに負担のかからないものに変更する)や、運動を止めるといったことが必要となります。

? その他
発熱、疲労、下痢(便通の状態)、二日酔い、貧血、循環器疾患なども原因となるので、チェックが必要です。とくに暑い時期は下痢になりやすいですが、下痢は脱水状態を引き起こし、水分を摂っても吸収が悪くなっているので、甘くみてはならないものです。

熱中症にかかりやすい条件など
熱中症にかかりやすい状態の者は以下の通りです。
暑熱障害にかかりやすい者
○ 体力の弱い者(新入生や新人)
○ 肥満の者
○ 体調不良者
○ 暑熱馴化のできていない(暑さになれていない)者
○ 風邪など発熱している者.
○ 怪我や故障している者
○ 暑熱障害になったことがある者
○ 性格的に、我慢強い、まじめ、引っ込み思案な者など
以下のような疾患を持っている者は注意が必要です。
暑熱障害の増悪因子
○ 高齢者
○ 心疾患(冠状動脈疾患など)
○ 高血圧
○ アルコール中毒
○ 糖尿病
○ 発汗機能の低下者
薬物(抗パーキンソン剤、抗コリン剤、抗ヒスタミン剤)
汗腺障害
強皮症
熱中症の起こりやすい環境や活動の条件などは以下の通りです。
気象・環境・活動条件など
○ 前日までに比べ、急に気温が上がった場合
○ 梅雨明けをしたばかりの時
○ 気温はそれほどでなくとも、湿度が高い場合
(例: 気温20℃、湿度80%)
○ 活動場所が、アスファルトなどの人工面で覆われているところや
草が生えていない裸地、砂の上などの場合
○ 普段の活動場所とは異なった場所での場合
(涼しいところから暑いところへなど)
○ 休み明け、練習の初日
○ 練習が連日続いた時の最終日前後
スポーツによる熱中症の予防
予防法のまとめとして
○ 環境条件を把握し、それに応じた運動、水分補給などを行う
暑い時期の運動はなるべく涼しい時間帯に行うようにし、急な激しい運動を避け、休憩と水分補給を頻繁に行う必要があります。(詳しくは「水分補給と体調管理」を参照ねがいます)
また、クラブ活動、チームなど集団での活動の場合、強制的に水分補給ができる時間を設ける”強制飲水”という方法を行うべきと思います。その際、必ず個人に水分補給の仕方のレクチャーをしてあり、一人一人が自分にあった補給の仕方を知っている必要があります。注意として、個人が好きなときに自由に飲める”自由飲水”という方法のみということは避けるべきで、強制飲水と自由飲水の両方を併用して行なう方法が最善と考えられます。(詳しくは「自由飲水について」を参照願います)

○ 暑さに徐々に馴らしていく(暑熱馴化)
熱中症は、7月下旬から8月上旬の梅雨明け直後に特に多く、また、夏季以外でも急に暑くなったときなどにも起こります。これは、体が暑熱環境や、体の発熱に馴れていないためで、急に暑くなったときなと゛は運動を軽くおさえ、体を暑さに少しずつ馴らしていく(馴化)必要があります。

○ 個人それぞれの条件を考慮する
上記に詳しく掲載しましたが下痢、発熱、疲労などで体調の悪い者は、暑い中で運動してはいけないことがわかると思います。また、体力の低い者、肥満、暑さに馴れていない者は運動を軽減し、運動中は特に注意をする必要があります。

○ 服装に気をつける
服装は軽装として暑さ寒さにあわせ、吸湿性や通気性のよい素材で、色合いも熱を吸収しないもの(白系統の色)にすると良いでしょう。直射日光は帽子で防ぐようにしてください。
例えば、暑い場合は、白いメッシュ状に織り込んであり、速乾性の素材の半袖シャツに、短パンというような服装です。

○具合が悪くなった場合には、早めに運動を中止して、必要な手当をする
指導・管理者などが、選手などを見るポイントとして、足の動きや運び、目の焦点、こちらの質問に確り反応できるか(質問は絶対に答えられるもので)の3点をチェック・ポイントとして判断の基準として下さい。もし、少しでもおかしいと判断したら、涼しいところで休憩させ、水分補給をさせてください。
また、手当については、「応急手当」のページをご覧下さい。

最後に
最後に、日本体育協会が平成5年に「熱中症予防の原則」として
下記の8ヶ条を発表しています。参考にしてください。
熱中症予防8ヶ条
1. 知って防ごう熱中症
2. 暑いとき、無理な運動は事故のもと
3. 急な暑さは要注意
4. 失った水と塩分を取り戻そう
5. 体重で知ろう健康と汗の量
6. 薄着ルックでさわやかに
7. 体調不良は事故のもと
8. あわてるな、されど急ごう救急処置
また、日本体育協会より「熱中症予防のための運動指針」が
日本サッカー協会より「夏期大会開催における指針」があります。

出典
川原 貴(1997) スポーツにおける熱中症
臨床スポーツ医学 14(7) 735-739

戸苅晴彦(1997) サッカーの暑さ対策
臨床スポーツ医学 14(7) 741-746

和久貴洋(1997) 剣道の暑さ対策
臨床スポーツ医学 14(7) 747-752

吉原 紳 ゴルフ場での事故と暑さ対策
臨床スポーツ医学 14(7) 769-773